【宿泊記】富士屋ホテルの2泊3日ブログレビュー
今回は、高齢の両親と共にゆっくりと日本クラシックホテルの会に加盟している富士屋ホテルを楽しむ2泊3日の旅です。
富士屋ホテルの立地と歴史
明治11年、なんと帝国ホテルよりも古く日本初の本格的リゾートホテルとして、箱根・宮ノ下に誕生したのが、今回滞在をした「富士屋ホテル」になります。
建物の多くが登録有形文化財でありながら、平成2年まで2年以上に及ぶ大改修をして、大変過ごしやすくなったと噂に聞いて、行ってみたくなりました。
場所は、小田急ロマンスカーの箱根湯本駅、もしくは新幹線の小田原駅から箱根登山鉄道で宮ノ下駅下車、徒歩7~8分です。
我が家は、今回は80歳と90歳の両親を連れての4人旅なので自家用車でしたが、東京から2時間程度で気軽に行ける上、駐車場が無料だったので出し入れの際にも手間がかからず、ありがたかったです。
歴史が長い建物から、現代風な建物まで、新旧が調和をした独特な佇まいで、内装・調度品に目を奪われました。
お部屋を決めるポイント
富士屋ホテルは、7600坪の敷地の中に、本館、西洋館、花御殿、フォレス・トウィングと、4つの宿泊棟があります。
4人で泊まるスイート…も考えたのですが、夜は離れてゆっくりしたいと(お義母さん、すみません)、ツインのお部屋を隣り合わせで2部屋にしたいと考えました。
ただ、高齢で2人とも足が悪いので、HP上の情報だけでは想像がつかなかったため、ホテルに電話をして事情をお伝えし、部屋のチョイスはホテル側にお任せしました。
チェックインと花御殿
歴史を感じる重厚な瓦葺屋根の本館玄関前に車を停めると、足が悪いのを察知してくださって、一番近い駐車場をご案内くださいました。
ドアマンの方が荷物を一式バゲージカートに乗せてくださり、私たちはエレベーターで2階のロビーへ。
磨き上げられた木目の床も美しいフロントで、ゆったりと椅子に座りながらチェックインをしました。
チョイスをお任せしたお部屋は、本館から西洋館を抜ける長い渡り廊下を歩きますが、アップダウンのない花御殿の入口近い2部屋です。
花御殿は、箱根の顔とも称されるほど、優雅で複雑な和風の屋根に、モダンな赤い高欄付きのバルコニーで、とても神秘的で独特な造りをしています。
日光の金谷ホテル創業者の次男山口正造氏が設計をされ、細部までこだわりが感じられます。
例えば、部屋の入口、ルームキー、便箋などのモチーフに、部屋の名前の花の絵が使われているのですが…このルームキーの大きいこと!
4人分持つと、片手では収まりません。
でも実は、西洋館1F(西洋館の1Fは、花御殿のB1と繋がっています)廊下には、昔の花御殿のルームキーが飾ってあるのですが、以前のキーはもっと大きかったようです。
絶対無くさないとは思いますが、海外からリゾートにいらしたお客様も驚かれたことでしょうね。
客席(ヒストリック デラックスツイン)とアメニティ
客室は35平米で、それほど広い感じはしませんでしたが、床と家具、窓枠など全体が木目を生かしたデザインで、とても落ち着きます。
昔の温泉旅館を思わせるようなダイニングセットの下には、花柄の絨毯が敷いてあります。
部屋の隅には…クラシカルなバタフライデスクがあります。明治時代の文豪は、きっとこのような机で小説を書いていたかもしれません。
机の上には、通常ならレターパックが置いてあるところに、文箱のような薄い桐箱。中には、お部屋のモチーフと同じ柄のレターセットが入っています。
最近、手書きのお手紙なんてめったに書かないけれど、思わず書きたくなる便箋でした。
私たちの部屋には大きなチェストが置いてありましたが、両親の部屋は数段の引き出しのみ。その代わり、2畳弱程度の広々したウォークインクローゼットがついており、とても片付けやすい間取りになっていました。
入って右手には、ミニバーカウンターがあり、下は冷蔵庫と食器類、上にはNespressoのコーヒーマシーンとガラスボトルに入ったお水が2本。「ノルダックプレミアムウォーター」というスウェーデンの製法を取り入れた水を詰め替えしており、環境に配慮してプラスチックを削減するものだそうです。
とても良い試みだと思いましたが、力の弱い高齢者にはプルトップが開けにくかったようです。ただ、ドアを出たすぐの廊下の一部が休憩所になっていて、宿泊者が自由に飲めるドリンクバーのようなものがあり、お部屋に持って帰れるように木枠のお盆までありましたので、飲み物には困らなかったようです。至れり尽くせりな感じでした。
さてお部屋の話に戻ると、ベッドはイタリアのマニフレックス社製。スプリングコイルを使用しない高反発素材のマットレスとのことで、きしみが感じにくく、とても静かで寝心地が良いです。セミダブルのツインでした。
バスルームは、大浴場を使用するつもりでしたので、あまりチェックはしませんでしたが、コンシェルジュの方が両親のために、福祉用の手すりや浴槽台などを手際よく設置してくださって、サービスもユニバーサルだと感心しました。
また、全部屋のバスルームに天然温泉が引かれており、大浴場に行かなくても宮ノ下温泉の源泉が楽しめるのだそうです。
アメニティは、ヘアブラシ、カミソリ、シャワーキャップ、歯ブラシ、コットンなど。
そして左手はバスルーム。両手開きのクラシカルな扉を開けると、すぐ右手に大理石の洗面台があり、後述のアメニティが置いてあります。
ルームウェアは、柔らかな藍染の長めシャツとグレーのパンツのセパレートタイプ。大浴場まで歩きますが、ルームウェアのままで廊下を歩いても、恥ずかしくないようなしっかりしたつくりです。
そう、これは!と思ったのが、クローゼットの中に入っていた、靴の木型です。男性用の大きなものと女性用の小さなもの。ちょうど雨の中を歩いたところでしたので、靴も木型に入れられて、すっかりリラックスしている気がいたしました。
スパ(温泉浴場)への道
スパは、本館・花御殿と廊下で繋がっている、「フォレストウィング」の6Fにあります。
スパの営業時間は、14:00~24:00、5:00~11:00です。
22.6平米の広々とした屋内風呂と半露天風呂があり、ロッカールームは、男性用、女性用共に40個あるそうですが、混雑状況はお部屋のテレビで確認することができますので、時間をずらして行かれると良いと思います。
浴場までは廊下を通りますが、ルームウェアとルームシューズでタオルは浴場にありますので、持って行かなくても大丈夫です。
泉質は透明なナトリウムー塩化物泉で、温度としてはややぬるめです。でも、匂いもせず、誰でも入りやすいお湯かと思います。
シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、クレンジング、洗顔料は、2種類のメーカーのものが用意してあり、パウダールームには、化粧水、乳液などのアメニティも揃っていました。
私たちが行った時には、コロナ禍でもあり混んでいなかったのですが、ホテルの規模からすると、多くの人が一気に入ったら大変だろうなと思いました(スパは撮影不可なので、写真は公式ホームページからいただきました)。
ディナー(メイン・ダイニングルーム ザ・フジヤ)
1日目のディナーは、メイン・ダイニングルーム ザ・フジヤ。
上品な水彩画を見ているような大倉陶園の食器とピカピカのカトラリーが並んでいるお席に着くと、それだけでドキドキと期待感が高まります。
コースは3種類で、19,000~27,000円。ワインも種類が多いのですが、ソムリエが選んでくれるペアリングもあるので安心です。
10月某日のメニュー
アミューズブーシユ、レバーのパテ、コンソメ、鮑のポワレ、グラニテ、牛フィレ肉はポルト酒のソースで(詳細は写真参照)。
素材に一工夫しながら、古典的な手法を使った伝統的なフレンチのコースは、どれも丁寧に作り込まれています。
特に前菜のオマールとリードヴォーのフリカッセは、見た目は驚くものではありませんでしたが、ふんわりととろけるほど柔らかいリードヴォーにアメリケーヌソースが泡状にかかっていて、それは軽やかな逸品でした。
また、水を1杯いただくのもプレゼンテーションがすばらしく、そのサービスに酔いしれる夜になりました。
バー・ヴィクトリアという歴史を感じるクラシカルなバーもあったのですが、ゆっくりと夕食を楽しんでいたので、ラストオーダーに間に合わず残念でした。
ブレックファスト(メイン・ダイニングルーム ザ・フジヤ)
翌朝、昨夜のディナーと同じ会場で、朝ごはんをいただきました。
自分で立ち上がるビュッフェではなく、和食か、洋食は4つのメニューから1つ選ぶ方式。
・卵料理を中心にした、ブレックファスト フジヤ
・フレンチトーストやパンケーキを楽しむ、ペストリーブレックファスト フジヤ
・たっぷりのサラダを中心にした、サラダブレックファスト フジヤ
・1900円の追加料金でオーダーできる、ブレックファスト フジヤスペシャル
(カニオムレツorカントリーソーセージorエッグベネディクト)
どのお料理にも、フレッシュジュースやヨーグルト、食べ放題のパン、飲み物がつきます。
私は、初日はサラダブレックファスト、翌日はペストリーブレックファストをいただきましたが、季節のスムージーが飲みやすく、また、ペストリーブレックファストは、フレンチトースト、パンケーキ、シナモントーストに、はちみつ、メイプルシロップ、ホイップクリーム、ミックスベリージャムをかけるという、甘いもの好きには夢のような朝食でした(写真は地味ですが)。
朝食に提供されるおいしいパンは、ホテルショップや敷地内にあるベーカリーで購入できますので、お土産にもぴったりです。
また、夫が頼んだ和食は、小鉢にさまざまなおかずがのった、目にも楽しめるもので、ついついご飯をお代わりしてしまう…と嬉しげに食べておりました。
メインダイニングは、夜とはまた雰囲気が違い、柱の隅々に掘られた彫刻や天井の絵画、欄間に明るい朝の光が入って、時間がゆっくり流れて素敵でした。
クラシックホテルの歴史を知る
2018年から2020年にかけて、富士屋ホテルは大規模な改修を行いました。歴史が140年ありますので、改修時には、さまざまな昔の道具やホテルの従業員すら見たことのない資料が出てきたそうです。
それらを集めて、改修時のお話しや富士屋ホテルの歴史を見られるようにしてあるのが、ホテル・ミュージアムです。
昔のホテルのマニュアルや図面など、見たって大して面白くなさそう…と思うかもしれませんが、然にあらず。昔のホテルマンの挨拶の仕方や「気をつけるべきお客様」など、ホテルライフを楽しむ方なら、きっと興味を引く内容だと思います。
また、皇室との関わりや有名人来訪時の珍しい写真など、ひとつひとつ見ていくと、あっという間に時間が経ちます。建築計画の映像も流れていますので、老若男女問わず楽しめるものだと思います。
歴史といえば、花御殿から本館の1階に続く廊下にも、創業時代のエピソードや資料・道具が飾ってあり、ゆっくりホテル内で過ごすにはぴったりです。
天気が良ければ、庭も散策されてみてください。
ジムとロマンティックなプール
花御殿の地下には、スポーツジムとプール「マーメイド」があります。
予約は必要ありませんが、ジムもプールも営業時間は7:00~21:00です。
プールは日本初の天然温泉を使用した温泉プールで、床はモザイク・タイル。
以前は別の場所にあったという2体の彫像が、水の中をじっと見守ってくれています。夜、ひとりで泳いで水から出た瞬間に像と目が合うと、かなりドキッとするかもしれません。
水着の貸し出しはありませんので、利用の際には持っていかれると良いと思います(ホテル内のショップで販売もしているそうです。ただ、サイズがどの程度あるのかはわかりません)。
また、プールの奥には、マシーンが4台ほど置かれたフィットネスジムがあります。マシーンは、イタリア製「テクノジム社」。
ジム内が狭いので、大きな窓があって、プールが眺められるようになっています。
レストランカスケードとラウンジのアフタヌーンティー
ホテル内には、旧宴会場を復元した「レストラン カスケード」があり、お土産のレトルトにもなっているほど自慢のカレーやハンバーグなど、年齢を選ばない人気メニューが揃っています。
また、ラウンジでは、サーモンときゅうりのサンドイッチ、スコーン、タルト各種の他、「あら、懐かしい」とつい口を出てしまう、白鳥のシューが乗っているアフタヌーンティーが6400円で。
こちらは、良くも悪くもクラシカルなので、今時の「映え」の好きなヌン活女子には、もしかしたら物足りないかもしれないなと思ってしまいました。
旧御用邸 菊華荘で、日本の礎に触れる
富士屋ホテルの敷地内にある純日本建築の建物が、旧御用邸の「菊華荘」です。
日本庭園を望む和室に、座敷テーブルが設えてありますので、高齢者でも膝を曲げずに座ることができます。
柱には御用邸の名残である菊の御紋がついていて、品格の高さを感じます。
お料理は、季節をふんだんに生かした、とても丁寧な作りです。特に、稲穂を丁寧に加熱して、ポップコーンのように米を弾けさせた一品は、ついつい、プチプチとつまんでしまいました。
ちょうど松茸の季節でしたので、土鍋で炊いた松茸ご飯が出たのですが、これがふっくらおいしくて、一粒も残すことなくいただきました(写真奥が稲穂のポップ)。
※今回、どうしても仕事の都合で、一品一品出てくると最後まで食べる時間がなかったので、家人はゆっくり食べたのですが、私は「ひとり分、お料理を全部一度に出していただけますか?」ととっても無理なお願いをしてしまいました。ですので、写真は、本来なら並ばないようなお料理が一度に出ています。
尚、敷地内ではありますが、夜は遅くて坂もありますので、送迎にバスを出してくださいます。
お土産用のショップとチェックアウト
食堂棟の地下1階に、ショップがあります。
富士屋ホテルの味を家庭でも楽しめる、ジャム、ハチミツ類、レトルトカレー、パンなどのお土産。
大きなアップルパイは、ピースでもホールでも購入できます。
ホテルのオリジナルグッズ。お部屋で使われている洋服ブラシ、目覚まし時計や花御殿のモチーフのグッズ、シャンプーなどのアメニティまで、気に入ったものを旅の思い出として購入できるのは嬉しいですね。
また、オリジナル寝具のショップもあって、枕や布団、室内着も購入できます。「富士屋グッズ」を愛している方が、たくさんいるということでしょう。
さあ、お土産までしっかり手にしたら、いよいよチェックアウトです。
バゲージカートでお部屋から荷物を運んでいただき、玄関前でゆっくり支度を終えてから、富士屋ホテルを後にしました。